【完】爽斗くんのいじわるなところ。
視界に入れるだけでむかつくし気になるし俺を苛立たせる莉愛。


そんな莉愛をあの夏祭りの会場で、見つけた。


茜色に染まる空の下、目に飛び込んできたみたいだった。


見慣れない髪形をして小さな花で飾って。


白地にピンクと薄紫のアジサイが咲いている浴衣を着た莉愛がすっとそこに立っていた。


はたはたとはためく足元。


提灯を見上げる横顔。


なぜか心臓がドキドキと鳴っていて、声が出なかった。


じり、と砂を踏む俺のスニーカーの音に反応した莉愛が、こっちに振り向いた。



『あ……爽斗くん、』



ひきつった顔で、一歩後ずさりして、ふいに目を逸らす莉愛の態度ぜんぶに、めちゃくちゃムカついた。


(は? なんでお前が避けんの?)



イライラしながらも、なぜか俺の目は莉愛を追ってる。


なんかわかんないけど、見ていたかった。


こっちを見ない莉愛をじっと見ながら、たぶん、可愛いと思った。


それと同時にほかの男子に見せたくないと思った。


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