【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「あーうざい。まじうざい」
隣から長いため息が聞こえてきた。
それに対して焦る暇もなく花火が打ちあがって、あたしの注意はそっちにいってしまう。
落ちて着ませんように……!
祈りながら息をのむ。
……生きた、心地が……しない。
「……俺、莉愛ほどめんどくさい女知らないんだけど」
そう言って立ち上がってしまった爽斗くんを、唖然と見上げた。
「……え?」
「どいて」と私を立たせて、せっかく場所取りしていてくれたシートを簡単にたたんでしまって、
切れ長の目があたしをじろりと捉える。
「なんで片づけるの……? ごめん!怖くないから……」
これって途中だけどもう帰るって意味だよね?
また、怒らせちゃった……。
「突っ立ってないでこっち来なよ。後ろの人の邪魔でしょ」
ぎゅっと繋がれた手を引かれて、慌てて着いていく。
「ゴメン」とか「まだあそこで見よう」とか色々言っているあたしの声は全部無視みたい……。
花火もろくに見られない自分が情けなくて申し訳なくて、泣きそうになる。