【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「綺麗……。爽斗くんこんな絶景の場所知ってたんだね」
「知らなかったけど、誰かさんが超絶チキンだから。どーせ花火にビビると思って調べたよね」
「え」
「そしたら案の定。予想通りんなったでしょ」
呆れっぽい目があたしに向いて、
どすっと頭の上に重みが加わる。
「……ね。俺すごくね?」
そんなの、乗っかりながら言わないで……。
どきどきしすぎて、目がまわりそうだよ。
でもそんなふうに先をよんでくれるところが、爽斗くんらしくて、嬉しくて。
「さすが……爽斗くんです。ほんとにありがとう」
「てかさ……」
何か言おうとした爽斗くんは、まっすぐ前を向いたまま、黙ってしまった。
「……。何?」
しばらく待ったけど、いうのやめたのかな。そう思って夜空を見上げたとき。
「小六の夏祭りの日のこと……ごめん」
そんな声が花火の音に混ざって聞こえた。
あまりに予想外で、声が出なかった。
「ずっと悪いことしたって思ってた」
彼らしくない言葉に、首を横に振る。
たしかに小学生の頃の爽斗くんは怖かったし、ひどいことばかりしてきたけど。
今は全然違う。
昔のこと何もかも帳消しにしてしまいそうなほど、好きだと思ってしまうくらい……彼に見え隠れする優しさみたいなものに触れていたいんだ。
だから、
「今日一緒に来てくれたから、もういいよ」
そう返すと、彼は「ほんと馬鹿」って小さく笑った。