【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「…うん、何?」


隣に立って下から窺う綺麗な横顔。


離れたところにある街灯のみが照らす薄暗いここで、爽斗くんは。



「……俺さ、ずっと莉愛に言いたかったことがあるんだよね」



やけに真面目なトーン。


真剣な目があたしに向いて、ドクンと心臓が跳ねあがる。


……なんだろう、この雰囲気。


どうしたの、爽斗くん……?



静かな瞳。何も言えなくなる。あたしはただ彼を見つめて。


爽斗くんの背景のずっと奥に、またひとつ花火が打ちがあがった。


——パーン……。



すると油断していた手がとられ、
爽斗くんの指が絡められて、ぎゅっと力がこもった。


「……え」



動揺。声にもならない空気が声帯を抜ける。


なんで、手なんか繋ぐの……?


棘っぽさの見当たらない優しい目が、あたしを見ている。




たちまち、ドクドクと打ちはじめる鼓動に、爽斗くんはきっと気づいているよね?



「……これ聞いても引かないでよ?」



念を押す爽斗くんに、小さくうなずいて返した。


爽斗くんに何を言われても引くわけないのに。


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