【完】爽斗くんのいじわるなところ。
イライラしながら人混みを抜けて
目に入ったのは……莉愛、


と、だれ、その男……?


駆け寄って背後から男の肩を掴んだ。


「なにしてんだよ?」


「いってー!」


あ、ちから入りすぎちゃった?


飛び上がりながら振り返った男子生徒の顔。


……なんか見覚えが、

ある、どころじゃない。


血の気が引いてんのか、
怒りで血が沸いてんのか
わけわかんない感覚になりながら



声を絞り出した。



「……なんでお前がいんの」



「うわー!久しぶり!サヤだー」


目に慣れないミルクティーカラーの髪。


相変わらず快活な目で、弾んだ声で、なれなれしくて。



「じゃあ莉愛ちゃんが涙目なのって、サヤのせいか」


……莉愛ちゃん、とか呼ぶこの男。


——深谷 優心(ふかや ゆうしん)


別の中学に進学したけど、
幼稚園と小学校が一緒だった、
幼馴染といえば、幼馴染。


それで。
俺がこんなにイライラしている理由は
他でもなくただひとつ。



「莉愛ちゃん、まだサヤにいじめられてんだ?」




小学生のころ、俺よりも莉愛と仲良がよかったのは、優心で。


……莉愛の初恋の相手だから。



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