【完】爽斗くんのいじわるなところ。



着火してすぐ、手持ち花火から火花が噴き出した。


「わー、花火だ」

「うん、花火だよ」


くすくすと笑う優心くんの花火とあたしのが交差して、夜闇を灯す。


黄色い光に照らされて、優心くんの無邪気な笑顔が良く見える。


これなら、怖いとも思わずにいれそう。


そう思うくらい、彼の声は弾んでいて、あたしまで楽しくなる。


「次これやろっか。はい、莉愛ちゃん」


「ありがとう」


あたらしい手持ち花火を渡されて、火をつけている最中。


「ね、莉愛ちゃんはさ、なんでサヤを嫌いにならないの?」


「……え?」



花火の先の紙が燃えていく。


――シュ、っと火花が噴き出した。



「だってあんなにいじめられてたら、普通嫌いになるでしょ? なのに部屋を行き来したり、言いなりになったり、不思議だなって思うじゃん」



大きな線香花火のような白い炎を眺めながら、


意地悪な爽斗くんを嫌いにならない理由を少し考える。


そんなの、簡単なことだけど。



「……爽斗くんが、優しいからだよ」



そう答えたあたしを、優心くんは、ぽかんと見ていた。


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