【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「あとね。これは誰にも言ったことないし、爽斗くんに確認したこともない話なんだけど……」


優心くんは相槌を打ってくれて、喋るのが下手なあたしを待ってくれている。


「……小6のとき、あたしのお父さんが長期出張に行くことになってね、お母さんも働いてたし、『寂しい』って爽斗くんに弱音はいちゃったことがあったんだ」


シュ、っとまた新しく花火が噴き出す。


「そしたら、爽斗くんの家とあたしの家のベランダの間にある仕切り板を、壊しちゃって、『面倒だからここから行き来しよ』みたいに言ってくれたけど……」


今、思えばあれって……。



「……莉愛ちゃんが寂しいっていうから、部屋をつなげたってこと?」


「……本当にそうかはわからないけどね」


この前爽斗くんと喧嘩してなかなか会えなかったときすごく寂しくて、壁の穴のおかげで寂しくなかったなって気づいて……。


それで穴をあけた日のことを思い出していたら、ハッとしたんだ。



自惚れかもしれないけど、あたしのために穴を開けてくれたんじゃないかって思ってしまったんだ。



「だから、サヤは優しい、か……」


こくりとうなずくあたしを、優心くんは見ることもせず。


「……サヤのしてることが莉愛ちゃんにとって優しいなら……。じゃあ俺どうすればいんだろ」


すっと視線をこっちを向いた。


優心くんの切なそうな瞳が、あたしを捉えている。



「……え?」


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