【完】爽斗くんのいじわるなところ。

そう思いながら、俯いて歩いていると、
爽斗くんはふと思い出したかのように喋り始めた。



「小6の時、俺らのクラスって”北風と太陽”の劇やったじゃん。覚えてる?」


「突然だね。……うん、覚えてるよ」


「当日旅人役の生徒が休んで、代役の莉愛が旅人の役やったんだっけ」


「う……うん。あたし……ぼろぼろだったよね」


スポットライトの熱さ、観客からのたくさんの視線。
舞台の上に立った瞬間、緊張でセリフだとか全部飛んじゃったんだ。



そんなあたしに、北風役の爽斗くんと太陽役の優心くんがセリフを全部教えてくれたっけ。



「あの時莉愛って、北風は俺で、太陽は優心が似合うって言ったじゃん」


「言った……かな」


「間違いなく言った。悪口かよってまじでむかついたから覚えてる」


「……! それはあたしなりの褒め言葉だったよ……?」


もごもごと言い訳をするけど、あの時恐れていた爽斗くん相手に、悪口の意味で「北風は爽斗くんが似合う」なんて言うわけないでしょ……。


とは言えないけど、本当に、褒め言葉のつもりだったよ。

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