【完】爽斗くんのいじわるなところ。

”藤光莉愛はふたまた中!
優心と爽斗を弄んでる最低の女”



黒いペンでそう書かれた紙が貼られている。



どくん、と心臓が大きく鳴った。


「……なにこれ」


「先生に言おう、莉愛ちん」


仁胡ちゃんの憤った声。


腕を何度もひかれているけど、
あたしの体は動かずただ張り紙を見つめている。


爽斗くんと優心くんとふたまたって……?



どうしよう、あたしのせいで、二人までさらし者になってしまっている。



さーっと血の気が引いていくのが分かった。



呆然と立ち尽くしているうちに、生徒たちはあたしの存在に気づいて、汚いものを見るような目が向けられてしまった。



「……ちが、」


「二股ってやばくない……?」
「おとなしそうな顔してやることやってんのな」
「ばーか、こういう子こそ恋に溺れがちだろ」
「逆に軽いってこと? やばー」



「ちょ、違うから! 莉愛ちんはそんなことしないから! 莉愛ちん、ユーシン呼んで来よう!?」


仁胡ちゃんが必死にそう言ってくれているのに、
あたしは、頭が真っ白で、顔が熱くて、目の奥がじわりと痛くなる。



あたしのせいで、ふたりまで変な目で見られてしまう。


どうしよう、なんて言ったらいいんだろう。



でもうまく思考が働かない。



うつむいて涙が浮かんできた顔を隠した時。


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