【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「じゃあ莉愛のお望み通り俺は学校に行くから。早く寝なよ」
そっと肩を押すと、莉愛はぐったりとベッドに沈み込んだ。
「薬、ありがとう……」
布団から手を出して、「ばいばい、いってらっしゃい」と小さく手を振る莉愛。
瞼を下ろして、辛そうに呼吸を繰り返す、その頬に触れる。
あつい。
熱高すぎない?
自業自得もいいところ。
俺の気配が離れないからか、莉愛は薄く瞼を開いた。
心細そうに、眉を下げて、潤んだ目して。
……一緒にいてほしいって、言えばいいのに。
「……やっぱその熱、もらってく」
熱い唇にそっとキスをすると、莉愛は余計に赤面して、目を丸くして。
……いい顔すんじゃん。
「だ……っ、だめだよ……、風邪が、ゲホッゴホッ」
がばっと布団を頭までかぶって、その中でむせている莉愛。
「まじで咳やばいじゃん」
莉愛はまだ布団から出てこない。
仕事に行った莉愛のお母さんを尊敬するわ。
俺ならこんな莉愛を置いて、学校へなんて行けない。
「今日俺、リビングにいるから。なんかあったら呼んで」
「え!? そんなわけにはいかないよ……」
「まじうざい。おばさんに学校休んでって頼まれたんだよ。びょーにんは黙って寝ろよ」
返事なんか聞くわけもなく、そう言って部屋を後にした。