【完】爽斗くんのいじわるなところ。
あ。ペンキ見つけた。
見つけたペンキを一つ手に取って、みると確かに二つ分は結構重い。
『ペンキとか結構重いのに、何パシられてんの』
さっき呆れっぽく言っていた言葉を思い出した。
それから黙り込んでいる彼に目を向けて、ハッとする。
「もしかして……あたしの手伝いについて来てくれたの……?」
「……は? そんなわけないだろ」
「じゃあ、どうして」
爽斗くんを正面から見上げた瞬間、どきりとした。
だって、爽斗くんのこんなに火照った顔とか、
唇を噛んだ顔とかみたことない表情だったから……。
「黙れよ」
赤らんだ顔を腕で隠す彼は、あたしの肩を押した。
「ひゃ」
よろけてガコンと机に缶をぶつけた瞬間、缶の蓋が少し開いてしまったらしく、蓋の周りに黄色が広がっていた。
「あ」
「こぼれなくてよかった……」
きゅっと、缶の蓋をキツく閉めなおして、再び彼に向き合う。
「セーフだった」
零れなくてよかったと、にこにこしたあたし。
たいして、なんだか不服そうな彼。
「……なんなの、莉愛」
むに、っと頬がつねられて、指が離れる。
「押してごめん」
「え!?」
「は?」
「いや……ううん。いいよ」
正直びっくりした。
「爽斗くんがあたしに謝るなんて……」
「普通なんかしたら謝るもんでしょ」
「最近までそんなことなかったような……」
「うるさいよ。俺も変わんの」
「……そっか」
「がきの頃から変わんないのは、泣き虫莉愛だけ」
こういうふうに憎まれ口をたたくところ、爽斗くんも全然変わってないけど……。
とは、言えるわけもなく言葉をのみこんだ。