【完】爽斗くんのいじわるなところ。
だけど爽斗くんはたしかに、小学生のころからしたら、すごく変わったし、


これからも大人になるにつれてどんどん変わっていくんだろう。



……その時、あたしは、彼のそばにいられるかな。


いや、そんなわけない。


この関係がいつまでも続くわけないんだ。



むしろ、あたしなんかと爽斗くんが今まで一緒に居られたことの方が奇跡なんだと思う。


自然と床へと視線が落ちていく。



「なんか寂しそうな顔してんのは、何で?」


爽斗くんに顔を覗き込まれて、びっくりした。



「……ううん。あたしも、もっと変わらないとだめだよね。爽斗くんがいなくても、平気にならないと」



「……俺がいなくても、って、何?」



鋭い瞳に射抜かれて、ぎくりとする。


「違うよ! 爽斗くんと縁を切るとかって意味じゃないよ……! 

あたしが根暗で消極的でなにもできないダメな人から、今までは爽斗くんに助けて貰ってたと思うの。

でもそんなじぶんじゃダメだなって。爽斗くん無しでもしっかりと・」



目を泳がせながら、必死で演説している途中。



「俺なしでも、しっかり生きたいわけだ? で、そのためにその根暗な性格を変えようと。そんな身の程知らずなこと思ってんだ」



彼は不服そうにあたしの話を要約してしまう。


うう、怖い……。


すると爽斗くんは、あたしの頬に手を添えた。
ふわりと、優しく。




「おい、根暗」



でもその声は、背筋を凍らせるほどの冷ややかなもの。


目と鼻の先で、爽斗くんは首をかしげ、その黒髪がさらりと揺れる。



「莉愛は、泣き虫で消極的で、人の意見に流されてばっかりで従順な……俺だけのいじめられっこで――」


透き通るような瞳に、息をのんだ。



「――……それの何が悪いの?」

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