【完】爽斗くんのいじわるなところ。
……じんわりと目の奥が熱くなっていく。


そのままでいいって、爽斗くんに受け入れて貰った嬉しさに、やっぱり泣きそうだ。


涙目をこすろうとしたとき。


「待て」


手をぎゅっと掴まれて、頬にぽたりと涙が零れた。



「手にペンキついてる」


「あ、本当だ……ありがとう」


「また泣いてる……ほんとお前、泣き虫」



ふっと口角を持ち上げる彼に、どきっとして一歩下がると、床に積まれた物に躓いて転びそうになった。



「ひゃっ」


「あぶな。ちゃんと足元見ろよ」



あたしの体を抱き留めた彼は呆れっぽく言う。



「それと……ペンキついたままの手で俺にさわんな」



――ぎゅ、


あたしの両手首を縛る様に、爽斗くんが片手で握った。


そして彼は、あたしを壁に押し付ける。


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