【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「って! あなた爽斗くんのこと好きなの!?」
仁胡ちゃんは蘭子さんを見て目を見開いている。
「うん! ね。藤光さん」
「……うん」
「え……でも莉愛ちんも……」
仁胡ちゃんの小さな声は多分隣にいるあたしにしか聞こえていない。
眉根を寄せてあたしを見る仁胡ちゃんに小さく首を振った。
「お化け屋敷って言ったら怖がった方がポイント高いのかな」
そう声を弾ませる蘭子さんは本当に爽斗くんが好きで、
だからこうやって頑張っていて……。
「爽斗くんは……怖がらせるのが好きだから、リアクションがあった方が喜ぶんじゃないかな」
気付けばあたしはまた、親切なアドバイスをしている。
「ちょっと莉愛ちん!」
仁胡ちゃんに「協力してどうするの!」と耳打ちされてやっとそれに気づいた。
「じゃあちゃんと、怖がろーっと」
でも、もう蘭子さんの気合は十分だ。
それにメイクも爪も髪も全部丁寧で可愛い。
こういう努力を一切していない自分が、恥ずかしくなる。
爽斗くんへの気持ちが、蘭子さんに全然及んでいない気さえする。
すこし沈んだ気持ちの中、列が進む。
次は、あたしたちの番。
「……がんばろう」
蘭子さんが自分を奮い立たせるために呟いた声。
蘭子さんの気持ちがわかるからだろうか。
彼女に協力しないといけないって思ってしまっている。