【完】爽斗くんのいじわるなところ。
お化け屋敷の中に入り、
闇の中、黒塗りされた段ボールの壁に囲まれた細い道を一列になって進む。


蘭子さん、仁胡ちゃん、あたしの順番だ。


おそるおそる歩いていると、
―――ドドドド!と突然壁を叩く音がしたり、


がー!!っと突然ドライヤーが吹いたり、


叫ぶポイントはたくさんあって、どれもこれも腰が抜けそうな演出で。


蘭子さんも演技ではなく本気で叫んでいると思う。


あたしはそれを邪魔しまいとくちびるを強く噛んで、噛んで……。


楽しそうな仁胡ちゃんの後ろを、ビクビクしながら半泣きでついていく。


目を細く開いて、とにかく進む。


あと……少しだから。


口に手を当てて、間違っても叫ばないように。



こわくない、怖くない……こわ「お前はこっち」


「ーーーっ!」「しっ!」


口を塞いでいた自分の手の上から、強く覆いかぶさる別の手。


「……ビビりすぎだろ?」


耳もとに落ちる、聞きなれた低いあきれ声……。


そこには、白衣を来た爽斗くんが居た。



「さ、さや、と、くん……」


腰が抜け、る、でしょ…。


「来て」


突然腕を掴まれ、
かと思えば、壁として使われていたはずの段ボールの中に引きずり込まれてしまった。


「な。なに……?」


壁の中は、体が密着するほど、狭い。


バクバクと心臓が鳴る。


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