【完】爽斗くんのいじわるなところ。
手の上に腕を置いて、もう一度目を閉じると、
「あっ」という莉愛の声が聞こえた。
「爽斗くんが寝てる」
「ほんとだー。莉愛ちんよく見つけたね」
「へへ……、ごめん、仁胡ちゃん、ちょっとだけそこで待ってて……!」
「お? はいはーい!」
会話が止まって、足音が近づいてきている。
……莉愛、なんでこっちくんの。
寝たふりしながら、全神経は莉愛にむけられている。
砂利を踏む音がすぐそこで止まった。
――ふわっと、
柔軟剤の匂いが鼻先をかすめて、
体になにか布をかけられた。
「……風邪ひかないでね」
控えめな声が小さく耳に残る。
ぎゅんと胸に何かが刺さった。
――こんなもんいらねーんだよ、とかって、腹の上に乗ったカーディガンを地面に叩きつけたいような衝動をぐっとおさえる。
タッタッタ……っと足音が遠のいていく。
「ごめん仁胡ちゃん、行こっか」
「うん! んもー、莉愛ちん優しいなぁ」
「そんなんじゃないよ……」
弾む声が遠くなる。
莉愛の温もりの残るカーディガンをかけられて、俺はいつの間にか、眠っていた。