【完】爽斗くんのいじわるなところ。
この人には、敵わない。
実の親より、ずっと俺の親みたいな存在だから。
うちの親は、かなりの放任主義で、仕事ばっかで。
俺がどんなやんちゃをしても、「うちの子がすみませんねー」みたいなもんで。
そんな俺に唯一、本気でぶつかってくれたのが、莉愛のお父さんだった。
いいことをしたら、馬鹿みたいに大げさに褒めてくれるし。
悪いことをすれば、ひどく冷静に叱られるし。
……すごく苦手で、同時に、ものすごく見放されたくない人でもある。
だから、俺は、おじさんのいうことだけは、反抗せずによく聞いた。
「莉愛もわかりましたね」
「はい……」
「じゃあ、説教はこのくらいで。明日からまた、喧嘩せず仲良くしてくださいね」
説教が終わると、わしわしと二人の頭を撫でて、くしゃっとした笑顔を見せてくれる、おじさん。
いつもは、「はい」と素直に頷けた。
でも俺、今回は……無理かもしれない。