【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「おじさん。もう単身赴任終わったんですよね」
「はい。もうここにいますよ」
「じゃあ莉愛、もう寂しくないよな?」
「え?」
莉愛が潤んだ目を丸くする。
おじさんが単身赴任することになって、寂しいって言った莉愛のために、
小6の俺はベランダの壁を蹴破った。
けど。
「おじさんが単身赴任から帰ってきたんだから、もう寂しくないだろ。俺……要らないだろ。だから――」
莉愛と俺の部屋を行き来する、ふたりだけの通路。
カーテンをあけて、莉愛が来るのを待ち続けた……あの通路。
「――だから、もうベランダの抜け穴、塞ごっか」