【完】爽斗くんのいじわるなところ。
帰り道は、優心くんとふたりだった。


日が傾いて、2本の影を長く伸ばし、木枯らしが道路の落ち葉を舞わせている。



「……痛いよね?」


「全然もう痛くないよ」


「本当にごめんね」


あの時の怒りが全く見当たらない。優心くんは、いつもの彼だ。



その感情が本物なのかはもうわからないし、



もしかしたら、気持ちを抑え込んで、そうしているのかもしれないけれど。



「……サヤんち行って謝ってくる」


と、家に行こうとしたのに、


マンションから一番近いコンビニから飄々と出てくる爽斗くんを見つけてしまった。


「わ……自宅謹慎中なのに、家出てる……」


「サヤらし……」





走って爽斗くんの進む歩道まで駆け付けると、



「……莉愛、大丈夫?」


爽斗くんの第一声がそれで、


「これお見舞い。口切れてるよね。ゼリー飲料ならいけるかなって思って買ってきた」


第二声がそれで、


「まじでごめん。治るまで何でもするから」


第三声がそれで……


「……さ。爽斗くんが、優しい……?」



あたしは目を見開いてしまった。


だったら殴られてよかった……。


っていや、何かの罠かもしれない。



そんなあたしに勿論彼は眉根を寄せる。

< 372 / 388 >

この作品をシェア

pagetop