【完】爽斗くんのいじわるなところ。

それから、やっと彼は、あたしの隣に立つ優心くんに視線を移した。


「優心さぁ……お前馬鹿かよ。先生から電話来たけど、げろったの?」


「うん」


「くそ真面目」


「本当にごめん、サヤ」



頭を下げる優心くんの頭に、ぽこんとペットボトル飲料をのせる爽斗くん。


「そんなのはいいけど。食事も喉を通らないほど背負い込むとかダサいザマになってない? 優心ってメンタル鬼弱いじゃん」



憎まれ口は、よく聞いてみれば、思いやりでできている。



「つーか、殴るよりもべつの意味で、莉愛を傷つけたことは、全然許す気ないからね」



ぎろりと向く、爽斗くんの視線に、優心くんはびくりと背筋を伸ばした。



「莉愛は単純だから、優心みたいな優しいのにすぐそそのかされんだよ。挙句嘘でしたって。莉愛はお前のこと好きなのに……」


苦しそうに顔をゆがめる爽斗くん。


その弱った姿を見た瞬間、あたしは言わなくちゃって、はっきりと口を開いた。



「爽斗くん……。あたしの好きな人は、優心くんじゃないよ」



木枯らしが吹き渡る。



「……は?」


気の抜けたような声と、信じられないと言いたそうな驚いた顔が、なんだかちぐはぐだ。


「何度も言おうと思ったけど、タイミングがつかめなくて……」


「……は?」


また同じリアクション……。

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