【完】爽斗くんのいじわるなところ。
ちぐはぐな彼を見上げて、あたしは、ぐっとこぶしを握った。


仁胡ちゃんと手を繋いだときにもらった勇気の残りで、奮い立たせる。



「あたしは、好きな人がいます……」


その人は、いじわるでいじめっ子、そういう仮面を被って


いつもその正体を明かさずにあたしを助けてくれたヒーロー。



あたしには全然似合わない、かっこよくて優しい正義の味方。



身の程知らずだけど、言わせて。



伝えたくて仕方ないから……。



「……あたしの好きなひとは、爽斗くんです…!」


カラカラと舞う落ち葉の音になんか消されるわけの無い大きな声は、
道路を挟んで向こうの人にも聞こえたらしい。


視線がぱっと集まった。


ドクドクと心臓が鳴っている。


「……え?」


呆気にとられたような声が聞こえて、あたしは視線を下ろしていく。



「……す、好きです、爽斗くん」



あぁ、やっぱりあたしは、俯いてしまう。


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