【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「今からお前んち行こ。おばさんたちには俺からも説明するから」
「いや、いいよ。そんなことしたらサヤまで殴られるかも……」
「……俺を誰だと思ってんの?」
「え?」
暗黒の微笑を浮かべる彼は。
「……なんかワクワクするかもね」
そんな恐ろしい言葉を吐いてしまうけれど。
意地悪はぜんぶ、大事なひとを守るために言うんだよね。
「……あたしも行く」
「莉愛ちゃんまで!?」
「うん。優心くんは、あたしにとって……すごく大切な友達だから」
優心くんに笑いかけると、また謝られてしまった。
「ひどいこと言って、傷つけてごめん。本当は……」
そこで、言葉を止めた彼は。
「んーん。やっぱいい。誰かさんが怖いから言うのやめる」
「優心のくせに賢明じゃん」
「まーね」
「……ふたり、なんか前より仲良くなってない?」
「ないよ」「ねーよ」
(……やっぱり仲良しだ)
って言ったら、きっと水をさしてしまうから、のみこんでおいた。
そうして、あたしたちは、優心くんのご両親に頭を下げて。
言葉巧みな爽斗くんの脅しに近い発言のおかげもあってか、あたし達が帰った後も暴力を振るわれることはなかったそうだ。