【完】爽斗くんのいじわるなところ。
ぼんやりと視界がゆがんでいく。
「…離れてかないで、おねがい」
あたしが悪いのに、
泣くのはずるいよね。
でも堪えられないくらい
爽斗くんが離れちゃうのが嫌なんだよ。
まだ足を止めてくれない爽斗くんの後ろを、
袖を離さずに、しつこく追いかけていたら
「んむっ、」
急に足をとめた爽斗くんの背中に
顔をぶつけてしまった。
「ごめ……涙ついちゃった、」
慌ててハンカチで拭きとる。
もう、なんであたし、
嫌われることばっかりしちゃうの。
余計涙があふれて、鼻をすするあたしに、
爽斗くんが振り返った。
ふわりと風に揺れる黒髪。
傾いた陽ざしが、きらきらと爽斗くんを包んでいるみたいに見えた。
「……、」