【完】爽斗くんのいじわるなところ。
あたしの髪をぐちゃぐちゃにかきまぜて、


そのついでみたいに、
袖で涙をごしごしと拭われた。



「爽斗くんの袖が汚れる……」


「どーでもいい」



爽斗くんは、
肩の上でスクバの肩ひもを握って歩き始めた。



「許してくれるの……?」


「……莉愛に本気で怒るわけないでしょ」



……え?

聞き間違い?


ううん、小さい声だけど
ぜったいそう言った……、言った……。


嬉しくてたまらなくて、
涙腺は緩みかけて、
口許がほころびそうになった時。


爽斗くんはあたしに振り返る。




憐れむように眉根を寄せ、目を細めた彼は
あたしを見下して言った。



「……って言ったら、嬉しい?」





……え!?




「嘘だよ、普通にキレるから」


「……!!」



一瞬、舞い上がりそうなほど嬉しかったのに、
嘘だなんて、そんな……。


爽斗くんは、いじわるだ……。



< 41 / 388 >

この作品をシェア

pagetop