【完】爽斗くんのいじわるなところ。
ぼやけた視界で
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入学してもうだいぶ高校生活に慣れた、五月末。
さっき爽斗くんからメッセージが届いたんだ。
【数Ⅰの教科書かして】って。
だから教科書をもって、
お隣のクラスの入り口までは来られたんだけど。
別のクラスに入るのって、
ちょっと緊張する……。
いまだ入り口で突っ立ったまま
教室を見渡せば
吸い寄せられるように目が行ってしまう。
……いた。
爽斗くんを見つけるのは得意なの。
小さい頃から爽斗くんは
自分から人に近づいていく訳ではないのに、人を惹き寄せるタイプで。
いつも男女関係なく色んな人と仲が良かったけど、高校でも変わらずそうみたい。
楽しそうに笑う女子に
肩を叩かれて、笑ってる。
「……」
あたしは幼稚園のころから
爽斗くんと何度も同じクラスになったけど
同じ輪で笑ったことなんか多分なくて。
あたしとは
交わらない場所にいる爽斗くんを見ると
やっぱり寂しい気持ちになる。