【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「莉愛」
と教室の奥の方から、
爽斗くんに呼ばれて、どきっとした。
もたもたしてたせいかな。
爽斗くんの声がちよっと不機嫌かも……。
「きょーかしょ、持ってきてくれた?」
爽斗くんは周りの目とか
気にしないんだと思う。
あんなに遠く離れたところから
会話はじめちゃうだもん。
「うん……! あ、優心くんごめん、行ってくるね」
「いってらっしゃい。俺はトイレー」
のんびりとした優心くんとは真逆に、
ひとり大慌てで教室に入って
教科書を差し出した。
「あの……はいどうぞ、」
「あ~! この子が爽斗の幼馴染の子?」
きらきらした女子が
俯き気味のあたしの顔を覗き込むようにかがんで、
ばちっと目が合ってしまって
挙動不審に目をそらした。
昔から、爽斗くんの友達は
クラスの真ん中にいて
根暗なあたしとは全然違くて、
ちょっと苦手意識を持ってしまうタイプ……。