【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「んー、そう。幼馴染」
爽斗くんは教科書をあたしの手から抜き取ると
「さんきゅー」って心のこもらないありがとうをくれた。
すると、ずいっと男子が寄ってきて、
「いやパシリかよ。でもあれ?この子めっちゃ可愛」
「ありえないから黙って。てか莉愛もう自分の教室戻んなよ」
なんとなく貶され
なんとなく一瞬盛り上がりかけた空気を
爽斗くんが一蹴して、
用無しとなったあたしの背中を強く押した。
気付けば廊下に追いはらわれていて、
呆気ないほど一瞬しか
爽斗くんと居られなかった……。
背を向けて輪にもどっていく爽斗くんを
名残惜しく見ていると、
爽斗くんの友達たちに手を振られた。
「またおいでよー」って声が聞こえたから
小さく手を振り返したけど、
その間も爽斗くんは、
あたしの方なんて、見てくれないし、
もしかしてあたしのこと、
友達に見られるの
恥ずかしかったかな……。
あぁ……、きっとそうだ。
もっと可愛くて華やかな幼馴染だったら
恥ずかしくなかったかな……。