【完】爽斗くんのいじわるなところ。
莉愛はなにも答えず、
俺の服をきゅっと掴んだ。
え、どーすんの。
なんか消えたいくらい顔が熱くなってきたんだけど……。
心臓がうるさい。
尋常じゃないって自分でもわかる。
……でもこんなん、負けたくないじゃん。
真っ赤になってそうな自分の顔だけは
悟られないように
莉愛のことをすっぽりと抱きしめてみる。
「なに平気で抱かれてんの」
本気で疑う。
俺だけが必死とか虚しすぎんだろ。
「お前……俺のこと男って思ってる?」
疑うように聞いたら、
確かに胸板に2、3回頷いた頭がぶつかった。
そういうちょっと冷静なとこが
よけい許せないんだけど。
「……だったら少しは取り乱せよ、バカ」
悔しさの混ざる一言と同時に、
莉愛のことを解放したら
あいつは両手で顔を隠して言った。
「……しんぞ、止まる……」
「は?」
「……、さや、爽斗くんの、バカぁ……!」
布団を頭の上からかぶって
丸く盛り上がったベッド。
それを呆気にとられながら眺める。
遅れて笑いが溢れてきた。
くつくつと、肩を揺らして
隠れてる莉愛を眺める。
……なにこれ。いい眺め。
「出ておいでよ?」
布団をはがしたら、
こっちが恥ずかしくなりそうなほど
顔を赤く染めた莉愛が
ちょこんと座っていて。
……ずぎゅんとなにか重いものが
心臓に突き刺さる。