【完】爽斗くんのいじわるなところ。
借りるあてを考えて
首を傾げながら廊下に出た。


中学の頃、仲良くしてくれた
数少ない友達は
みんな近所の女子高に進んだ。


この高校には
顔と名前は知ってるけど……というような
間柄の子しかいない。


……見学しようかな。


見学も、体操着いるっけ?


首を傾けたちょうどその時。



「なにしてんのー、根暗?」



——どす、

とあたしの頭に重みが加わって
首がごきってなりそうだった……!


「……さ、爽斗くん。痛い……」


「何マヌケな顔してんの」


あたしの背後から乗りかかるの、
やめてほしい……。



「体操着忘れちゃって、見学って制服でも大丈、ンムッ」


なにかが顔めがけて降ってきた。



「うん、聞こえてた」



鼻、痛い……。
次は顔を狙うなんてひどい……!


顔に押し付けられたものを思わず掴むと


これ、体操着袋……?



「……え」


「俺の貸してあげる。お前かわいそうなほど友達いないもんな」



わぁぁ、すっごく見下されてる……。



「ありがとう。……でもサイズが」


「は? 俺が貸してやんのに文句とかあるんだ?」


「な、無いです……!ありがとう。それじゃあ」



「待てよ」



くっと、腕を掴まれて振り返る。



「露頭に迷うコミュ障なんて、哀れすぎて見てらんないから、」



ポコンと彼の手の甲が頭に落ちてきた。



「忘れ物の面倒くらい俺が見てやるよ」


呆れっぽく細まる茶色の瞳。
とくんと胸が鳴って、じわりと体温があがる。



「あり……がとう……」




両手で体操着袋を
こんなに強く抱きしめてるのは、


嬉しくてたまらないから……。


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