【完】爽斗くんのいじわるなところ。






そうして、放課後。


「藤光さーん、ちょっといい?」



帰る前にお手洗いに寄ろうとしたら、
蘭子さんに声をかけられた。



「藤光さんって、3組の爽斗くんと家も隣なんだよね?」


「うん」


「そこでお願いがあるんだけど、これ渡してくれない?」


そう差し出されたのは、
くすんだピンク色の封筒。


金色のハートのシールで、
封が留めてある。


やけにお洒落だけど
かたちとしては、これって、
典型的な……その、


「……ラブレター……?」


小さく窺うと、蘭子さんは恥ずかしそうに
コクと顎を引いた。


「……実は入試のときに一目ぼれしたんだ。入学前からこんなの書いて持ち歩いてたんだけど勇気でなくてさぁー。爽斗くんみたいなイケメンに会ったことなかったしね」


「あ……」


爽斗くんのことを、好きって、ほんとに……?



混乱しながら差し出されたラブレターを
そっと受け取った。



だけど。



入学してからずっと持っていたのに、
しわひとつなく大切に扱われた封筒も、


あたしの前で、
恥ずかしそうに笑う蘭子さんの気持ちを表してるよね。


その気持ちって軽いものじゃないよね?


あたしのと同じ……恋、なんだもんね……?



「……ごめん。これ、あたしからは渡せない……」


震える声でそういいながら、
そっと手紙を返した。


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