【完】爽斗くんのいじわるなところ。

「へー。あはは、そうなんだ?」


笑い声、あたしの前じゃ
こんなに簡単に見せてくれないのに。



「まぁ、蘭子ちゃん可愛いもんなぁ」



……”可愛い”だって。


誰かに向けたそんな言葉、
どうしてあたしを見ながら言うの。



「話も楽しいし蘭子ちゃんとしゃべんの飽きないね」



どうせあたしとの話は
おもしろくなんかないよ。


そう卑屈になってしまいそうなほど
爽斗くんがあたしに向けている目は無感情。


「そうそ、なんでそんなわかってくれんの。さすが蘭子ちゃん」



それに”蘭子ちゃん”って
いっぱい呼びすぎ……。



あたしのこと
そんなに大事に呼んでくれたことあったっけ……。



……ない。


他の女の子とあたしとじゃ
こんなに違うんだって
見せつけられてるみたいだ。



……あたしのほうがずっと、
長いこと傍にいるのに。


なんでこんなに
手が届かないんだろう。




胸が苦しくなってきて


髪に触れる爽斗くんの指先を
払い落とした。



「……」



いつの間にか噛んでいたくちびる、
もう少し強い力を入れて、
泣かないように俯いていたら



「……ふ、」



すぐ隣で爽斗くんは、
くつくつと肩を揺らし始めた。



それを見たら余計に悲しくなってくる。



……なんで。


なんで笑うの?


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