極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
しばらくすると、椿生は少し何かを考え込んだ後に、畔をジッと見つめながら手話である事を聞いてきた。
『畔………。ずっと気になってた事があるんだ。聞いてもいい?』
彼が畔に気になりつつも言えなかったこと。
畔には全く検討もつかず、首を傾げる。
すると、椿生は天井に描くように手話を始めた。
『前に畔の幼馴染みが話していただろ?おまえが嘘が嫌いだって言ってた。…その理由を聞いてもいいか?』
『その事だったんですね。………でも、話しても面白くも楽しくもないですよ?』
『いいんだ。畔の事なら知っていたい』
『わかりました』
畔は苦笑してそう答えると、椿生と同じように視線を天井に向けて、腕を上げた。
『学生の頃に耳が聞こえなくなったんです。その時の友達は私が歌手になるのが夢だと知っていたので、それでも出来るって応援してくれてたんです。その時は私も普段の生活に戻れるように少しずつ立ち直ってて、話もなるべく声に出して会話するようにしてました。けれど、少しずつ友達の様子が変わってきたような気がしてきて。それでも一緒にいてくれるから、大丈夫なんだって思ってました』
畔はそこまで話して、ふーっと小さく呼吸をした。
話そうとしている事を思い出そうとすると、どうも体が強張ってしまう。怖くて仕方がないのだ。
すると、椿生に畔を抱きよせてくれる。彼の方を見ると、椿生は微笑み、『大丈夫』と言ってくれる。畔は小さく頷くと、また前を向いて話しを続けた。