極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
手話が出来るスタッフも多いが、今日は出来ない人だったので、叶汰が代わりに手話で通訳してくれている。口の動きで大体わかるようになったけれど、やはり手話の方がわかりやすい。が、歌の話なので、叶汰は機嫌が悪そうだった。
「コンサートはやりたくないって」
『叶汰っ!私、そんな事言ってないでしょ!!』
叶汰が畔が手話で話した事とは全く違う事を伝えるのに気づいた畔は、怒り叶汰に厳しい視線を向けると、彼は舌打ちをした後にプイッとそっぽを向いた。
畔は仕方がなく、スマホで文章をうってスタッフと会話するしかなかった。
帰りのタクシーに乗った後、遠くなるベリーヒルズビレッジを見つめた。
彼と出会った場所。
その場所から目が離せない。
(あの人は私の歌を聞いてくれただろうか)
いつもならば、ライブの成功の余韻に浸っているはずなのに。今回は違った。
頭から離れないのは、昼間の男性の事だ。
あんなに良いコンサートが出来たのだ。
今の自分のでは満点だったかもしれない。だからこそ。彼に見てもらえていたならば……そんな事を考えてしまう。
畔の意識はまた手当てをしてくれた足へと向く。
包帯が巻いてあるあの場所が、またじんわりと温かくなるのを感じた。