極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
『じゃあ、今日はずっと歌の練習をしてたんだ』
『はい!すごくいい仕上がりになったので。早くライブがしたいです』
『俺も行ってみたいな』
『来てくれるんですか!?』
『もちろん、行きたいよ。畔の晴れ舞台なんだから』
袋を持ちながら何とか手話で会話をする。
手を動かす度に袋が揺れ、きっとガサゴソと音が鳴っているのだろう。そんな些細な事が面白く、畔は笑ってしまう。
そんな話しをしながら、マンションのエントランスに入る。
すると、不意に椿生の足が止まった。椿生が驚いた目をしており、畔もその視線の先を見つめた。
すると、そこには叶汰の姿があった。
いつものように不機嫌な表情をしていたが、畔にはわかった。かつてないほどに彼が怒っているのを。鋭い瞳に、眉もつり上がっている。
『叶汰!どうしたの?………それにどうしてこの場所がわかったの』
「…………おまえ、神水椿生なんだよな?」
「……………」
畔が叶汰に手話で話し掛けるが彼は全くこちらを見ずに椿生を睨み付けている。
その迫力に、畔は何を言っていいのかわからなかった。
まず、彼がなぜそんな風になっているかも検討もつかないのだから。