極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
28話「名前を呼ぶ声」

   28話「名前を呼ぶ声」


 (嘘………椿生さんが………)


 頭が揺れ、手が震えた。
 畔はフラフラになりながら、叶汰の手を払い椿生の正面に立った。
 椿生の腕に触れた後、彼を見上げた。
 すると、こちらに気づいた彼が視線だけ畔に向けて落とした。

 『椿生、教えてください。叶汰が言っている事は嘘ですよね?』

 わかっていても、どうしても彼の言葉を聞きたかった。彼から「違うよ。嘘なんてついていないよ」そう言ってもらいたかった。

 けれど、彼の口は違う動きをした。

 「……ごめん…畔…」

 手話もない、呟きだった。
 畔は体がぐらつくのを感じながら、彼の腕を揺すった。けれど、椿生はこちらを見ずに苦しそうにするだけだった。

 『どうしてですか?何で……なんで嘘をついたんですか?教えてください……何か理由があったんですよね?!』

 彼の目の前で必死にそう手話をしていると、畔の瞳から涙があふれでてきた。
 彼の目は閉じられ、畔の事を言葉を全く聞こうとしてくれないのだ。
 それが悲しくて、苦しくて、畔はまた彼に抱きつこうとした。

 けれど、それを叶汰が止めた。
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