極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
32話「ただいま」
32話「ただいま」
☆☆☆
畔はタクシーを探しながら、先程叶汰から受け取った自分のスマホを開いてみた。す充電がなくなり、真っ暗な画面があるだけだった。
畔はガッカリしながらも、夜の街を歩いた。けれどタクシーはなかなか見つからない。畔は少しでも早く到着するために、小走りで歩道を走りながら、タクシーを探した。
息があがってきた頃に、ようやく空車のタクシーを見つけ、畔は急いで飛び乗った。
バックからノートを取りだし、畔は走り書きで椿生の住所を書き上げ、運転手に差し出した。畔がしゃべれない人だとわかったのか、指で○を作り優しく微笑んでくれる。年配の男性ドライバーに感謝して、彼の家まで向かった。
手持ちのバックからキーケースを取り出す。
それを開くと、椿生の部屋の鍵が目に入る。今は、この鍵だけが畔と椿生を繋げてくれている。
そんな風に思い、畔は手の中のキーケースを握りしめながら、胸に押し当てた。
椿生は会ってくれるだろうか。
また、出てもくれないのだろうか。
それが怖くて仕方がなかった。
けれど、それを怖がってしまえば、今後彼に会うことが出来なくなってしまう事だった起こり得るのだ。