極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
ありふれた愛の歌かもしれない。
ただの片想いの歌に思われるかもしれない。
けれど、畔にとっては恋なのかと気づき始めようとする姿を描いた曲であった。
そんな願いを込めて、畔は夜空の下、歌い続けた。
名前も知らないあの人を頭に浮かべながら、1番のサビを歌い上げた後にゆっくりと瞼を開いた。
と、そこには驚きの光景があった。
誰もいなかった真っ暗の公園の奥には、次から次へと人が集まり、畔の演奏を聞いてくれていた。畔が目を開けた瞬間に、拍手をして応援してくれる人、歌声や曲につられてこちらに駆けてくる人たちもいた。
あっという間に、畔の周りには人だかりが出来ていた。
その光景を呆然と見ていた畔はハッとしてスマホを見た。落ち着くために小さく息を吐き、タイミングをしっかりと体に刻み、また歌い始めた。
次はもう目を閉じず、笑顔でその歌を歌った。
すると、うっとりとした表情で聞いてくれたり、真剣に歌詞を耳にして、聞き入ってくれる人、体を揺らしてくれる人。さまざまな方法で畔の音楽を楽しんでくれていた。畔はまた嬉しさを感じ歌い上げた。
そんな時間はあっという間だった。
音楽が終わり、畔がお辞儀をして顔を上げると、聞いてくれていた人達が拍手をしてくれているのがわかった。
とても嬉しく思わず微笑み周りをゆっくりと見て何度も頭を下げた。
みんなが笑顔になってくれた。最後まで聞いて貰えた。それが嬉しくて、畔は気持ちよくなりながら、笑顔で応えた。そして、あと1曲ぐらい歌おうかな、そんな風に思った時だった。
若い2人組の女の子が、畔の方に近づいてきた。