極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
『君の活躍はなるべく耳に入れないようにしていたんだ。……眩しすぎて、自分の足元がとても暗く感じてしまうような気がしたんだ。音楽だけでやっていくのは不安だったし、家の都合もあった。薬剤師になれれば安定もするし、両親も安心する。そんな風に自分の夢は後回しにしてきた。少しずつ、作曲を再開して、今は軌道にのってるけど、音楽で成功した人を見るのはなるべくならさけたかった。でも、あの日君の歌を聞いて、すぐにCDを買いにいったよ。そして、あの曲が「青の音色」というタイトルで驚いた。君は俺がイメージした事を全て感じ取ってくれていたんだ。そんなhotoRiという人間が憧れになり、そして……また会いたいと思った』
椿生は楽しそうに笑い、再会した日を思い返した。もちろん、畔も同じだった。
あの日の出会いはとても衝撃的で、そして彼に惹かれた瞬間なのだから。
『だから、また会って、デートをするなんて信じられなかった。隣で微笑む君をみてとても幸せだった。そして、恋人になりたいって思った。だけど、君は誰もが知っている有名な歌手。とても輝いていて綺麗で、困難にも乗り越えて自分の力で生きてきた人だ。とても眩しい。その反面俺は夢を諦め、そして地位も何もない。自分とは住む世界が違うと思ったんだ。だけど、君の事が、諦めきれなかった。だから、咄嗟に嘘をついた。俺と同じ椿生という名前の大企業の名前を使ったんだ。……よくからかわれていたんだ。同じ名前で同じ年齢なのに、神水家の息子は優秀だってね』
椿生は、眉をひそめながらそう打ち明けた。
ずっと隠していた真実と、彼の気持ちだった。
一緒にいても、辛かったのだろうか。いつかバレてしまうだろう嘘に怯え、別れる日を予感さていたはずだ。
畔と自分は釣り合わないと思っていたのだ。
だから、嘘をついてしまった、と。
畔はそれを聞いた後、無表情のまま彼に手を伸ばした。そして、椿生の耳を掴み思いっきり引っ張った。