極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました

 『ねぇ、名前呼んで?』
 「つばき?」
 『もう1回』
 『もうー!名前呼び始めると止まらないんだから』

 畔が椿生の名前を呼ぶのを彼はとても嬉しがってくれ、1日に何度も要求してくるのだ。

 『歌以外で君の声を聞けるのは俺だけの特権で、しかも名前なんて嬉しすぎるから』
 『ずるいです!私ももっと名前呼んで欲しいです』
 「ほとり………。好きだよ」

 突然、手話もなく、そして愛の言葉を伝えられ畔は驚き、顔を赤くした。
 そして、畔も小さく息を吐く。

 「つばき……すき……だいすきよ」
 「……っっ………」
 
 畔のぎこちない言葉。
 けれど心がこもった大切な声。
 椿生は息を飲み、そしてとても嬉しそうに微笑み畔を抱きしめた。

 『畔………こんな風に伝えるつもりはなかったんだ。けど、今の気持ちを伝えるよ』
 『え?椿生どうしたの?』

 いつのなく真剣な彼を見て、畔はドキッとしてしまう。椿生は畔の頬に触れた後、愛しい物に触れるように目を細めた。

 『俺と結婚して欲しい。俺の花嫁になって欲しいんだ………』

 今度は畔が息を飲む番だった。
 突然のプロポーズ。きっと彼も今日伝える予定ではなかったはずだ。引っ越しの荷物で溢れた部屋で、ニュース番組が流れている。ロマンティックではないかもしれない。

 けれど、畔の声を聞いて、椿生が感動してくれたのだとわかると畔は涙がこみ上げてきた。
 もちろん、幸せすぎるからだ。

 畔は彼に抱きつき、「つばき」と何度も名前を呼んだ。その声は初めて名前を呼んだ時のような悲痛な叫びではない。
 幸せの声だった。

 
 これからの日々は大好きな人が傍にいてくれる。とても幸せで心地のいい時間になるだろう。

 音のない生活。
 だけども、とても彩り豊かで、心が明るくなる時間。
 そんな時を椿生となら歩んで行ける。

 畔はゆっくりと目を瞑り、海のさざなみの音を思いだし、頭の中で音符を並べる。
 海のほとりの2人の未来も、きっと幸せでありますように。そう強く願った。

            (おしまい)


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