極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
頭の中に探している作家の名前を浮かべながら、沢山の本が詰まった本棚を見つめゆっくりと歩いた。
すると、目的の物はすぐに見つかった。思っていたよりも分厚い本だった。豪華な表紙には、「芥川龍之介全集」と書いてあった。畔はその本の目次を開く。
(あ、あった………。短いお話なんだ)
お目当て話の題名を見て、畔はそんな風に思った。立ち読みでも読み終えてしまうのではないかと思うぐらいの短編だった。
けれど、畔はどうしてもこの話が気になり、分厚い「芥川龍之介全集」をレジに持っていったのだった。
家に帰るより先にどうしても買った本が気になり近くのカフェに入った。アイスココアを注文し、店内の奥のソファ席に座った。
本を開くとココアの甘い香りよりも本独特の紙の匂いが勝り、畔の鼻先に届く。その匂いを嗅ぐと、ワクワクした気持ちになってしまう。昔から本を読むのが好きだった畔ならではの感覚かもしれない。古本の香りでも同じようになるのだ。
(『海のほとり』………。椿生さんが話してたのはこれだ)