極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
9話「祭りの後の寂しさ」
9話「祭りの後の寂しさ」
夏祭りが行われていたのは、小さな神社だった。少し高い場所にひっそりと本殿があり、そのまでの石畳の階段の両脇に屋台が並んでいたのだ。人も沢山おり小さな子どもが浴衣を着たり、カップルが手を繋いであるいたり、老夫婦が焼きそばを分けあって食べていたり。地域のお祭りという雰囲気があった。
畔と椿は、赤提灯と屋台の光に照らされた階段を登り、拝殿でお参りをした後、本殿の裏手に回った。
『ここの裏から高台に行けるんだ。少し歩くけど大丈夫?』
『行ってみたいです』
『じゃあ、決まり』
スマホのライトでノートを照らしながら会話を書いていく。椿生はスマホをライトをつけてかく事を提案してくれたのだ。だが、そのライトはノートを照らさずに、今度は夜道を照らす事になった。
高台への道は、ゆったりとした階段になっていた。街灯もあったけれど、間隔が遠く暗い道も多かった。畔は椿生が足元を照らしてくれていたので、しっかりと階段を確認しながら歩き続けた。屋台で買ってくれた食べ物を持ってくれている。それなのに、ノートも持ち、自分の足元は照らさずに畔の心配だけしてくれている。
この時間だけは、彼を独占しているのだ。それを実感できるのだ。
そんな風に思って、畔はハッとしてしまう。椿生は自分の恋人でもないのに、独占したいと思ってしまったのだ。
彼への気持ちが会うたびに大きくなっているのだ。
そんな事を考えていれば、足元は疎かになってしまう。
「………っ……!!」
足元に大きな石が転がっているのに気づかず、足をとられ転びそうになってしまった。が、彼が畔の体をしっかりと支えてくれたのだ。椿生の温かい腕の感触を感じた。