極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
畔はゆっくりと彼の名前を手話で伝えた。名前を伝えれば叶汰は安心するだろう。そう思ったのだ。
だが、叶汰はその名前を聞いた瞬間、ハッとした様子でこちらを見た。
『畔………さっき製薬会社で働いてる奴だって言ってたよな?』
『そうだけど…』
驚いた顔でそう言う叶汰に畔は戸惑いながら返事をする。すると、彼はゆっくりと手話で伝えた。
『神水製薬会社……業界トップの老舗会社。椿生は現在の社長の名前だよ。女社長だと思ってたが、男だったのか』
『え……。社長?』
椿生が大手会社の社長。
そ製薬会社で働いているという話しか聞いていないのだ。けれど、神水製薬と言えば誰でも知っている会社だ。自分が椿生と一緒に居る事で浮わついていたから気づかなかったのだろうか。
畔は椿生の立場を知り、足元がぐらりと揺らいだ気がした。
『おまえ、わかってるよな?そんな立場な人とは…』
『わかってるよ………』
叶汰の問い掛けに、何とか手を上げて返事をして畔は叶汰を一人エントランスに残し、エレベーターに乗った。
頭の中でぐるぐると椿生の事だけがまわっている。どんなに考えても、到着する答えは同じなのだ。