極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました

 ふらふらとした足取りで、畔はやっとの事で部屋に到着する。
 ソファに座り込んで、彼から預かったノートを取り出した。

 (わかってる………。耳が聞こえない。しゃべれない。歌うことしか出来ない私が、社長の恋人にもその先にもいけない事なんて………わかってる)

 社長という立場でも関係なく愛していると、言えたらどんなによかっただろうか。
 自分はいいかもしれない。
 けれど、椿生の社長という立場では、きっと困る事が多いはずだ。聞こえない、しゃべれない恋人と付き合えるはずがないだろう。

 ただの遊びだった?hotoRiという少し有名な自分と遊びたかった?

 椿生はそんな人じゃない。そんな事はわかっている。
 けれど、どうしても自信がなかったのだ。歌しか取り柄のない自分の事を。

 恋愛は辛い。
 そんな事は恋愛小説や愛の歌でわかっていた。
 けれど、失恋の痛さは想像以上だった。

 畔はノートを抱きしめて、涙を堪えながら椿生の忘れ方を探した。
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