極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
椿生だけはきっと畔自身を見てくれている。
そう思えるだけで、畔の心は少しだけ軽くなってきたのだった。
椿生が連れてきてくれたのは、大きな湖がある場所だった。自然に溢れた森の中を歩いたり、湖の近くのレストランで食事をしたりと、畔はいつもとは違う空間を楽しんだ。
昼御飯を終えた後、2人は湖の近くをまた歩いていた。丁度空いていたベンチを見つけ、そこで休憩する事になった。
椿生が買っていてくれたペットボトルを飲みながら、太陽の光を浴びて白く光る湖を見つめる。とても澄んだ水で、湖の中の緑もよく見えた。宝石でも落ちているのではないかと思えるほどの鮮やかな緑色だった。
『今日はどうしたの?元気ないね』
椿生がそうノートに書き込み、畔の顔を覗き込んできたのは、湖を2人で見ている時だった。
やはり彼は気づいていたのだな。畔はそう思い、苦笑した。
『デートの予定を聞いた時からいつもと違ったけど、何かあったかな?気になる事があったら何でも話してみてほしい』
椿生は畔の方へ手を伸ばし、頭をポンポンッと撫でてくれる。彼にとっては何気ないやり取りだったかもしれない。
けれど、畔はそれがたまらなく嬉しくて、安心出来た。
畔をジッと見ている椿生は、畔の考えが聞きたいのか、答えるのを待っているようだった。こうなってしまっては、黙っている事は出来ない。
畔は少し心配になりながらも、ゆっくりとノートに言葉を書き始めた。
『椿生さんは神水製薬会社の社長さんなんですよね。私、知らなくて……そんなすごい方だとは知らずに、すみません』
畔はそんなメッセージを書いた後、彼の表情を見るのが怖くて、そのまま俯いてしまった。
すると、椿生はすぐにノートに返事を書きはじめた。長い文章だった。畔は視線の端で、赤いペンを持つ彼の手が、ノートを擦っていくのを隠れ見ることしか出来なかった。