極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました

 『昔、母親に無理矢理ピアノを習うように言われてね。子どもの頃は嫌だったんだけど、弾けるようになったら嬉しくてね。今では母親に感謝しているよ。あそこで弾いたのは、病院側から頼まれててね。定期的にピアノを弾いてくれないかって。俺も誰かに聴かせるとなれば練習もするし、腕は落ちないかなーと思って引き受けたんだ』
 
ベリーヒルズビレッチにある病院は高級な場所で有名だ。誰でもステージに上がれるわけではないはずだった。やはり神水製薬会社の社長であり、そして腕が立つのだろう。
 畔の胸が少しだけ痛んだ。

 『………最後に弾いた曲は、もしかして「青の音色」ですか?』
 『そうだよ。よくわかったね』
 『何となくですけど』
 『………大切な曲だからね。覚えたんだ』

 好きな曲の話のはずなのに、彼は何故か悲しそうな表情を見せた。
 それが畔には何故かとても気になったのだった。
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