極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
車内で次のデートの予定を決めながら、畔のマンションまで向かう。車だとあっという間の距離だが、2人きりの時間が畔を安心させた。
『なんだ、あれは』
椿生の呟きが、スマホの音声アプリに伝わり、畔もその言葉を知る。けれど、それを見る前に畔自身も異変に気づいていた。
畔の家の前に、人だかりが出来ていたのだ。
『畔ちゃん、隠れた方がいいかもしれない。シートベルトを外して小さくなってて』
畔は彼からのメッセージを確認すると、戸惑いながらも頷く。すると、その上から何かを掛けられたのがわかった。
椿生のスーツのジャケットだ。
視界が遮られてしまうと、畔は何もわからない。真っ暗な世界で、車に揺られるだけだ。
だが、不安にならなかったのは椿生の香りに包まれているからだろう。少し薬品の香りと、安心するウッドの香り。畔はスーツのどこかの部分を手で掴み、ただただ彼の香りを感じながら終わりがくるのを待った。