極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました

 『大丈夫だったかな?』

 畔にかけられていたジャケットを取られ、畔は体を起こした。今居るのは、マンションの地下駐車場だった。

 『あれは何だったのでしょう?』
 『まだわからないけれど、事件だったら警察や救急が来ているだろうし。俺は君が目的なんじゃないかと思う』

 椿生にそう言われ、畔は動揺してしまう。あれは報道記者だ、という彼の考えにハッとしたのだ。
 畔は鞄にしまったままになっていたスマホを取り出す。すると、マネージャーの根本から何回も電話の着信とメッセージが届いていた。メッセージには「無事なの?返事頂戴!」と畔を身を案ずているのがわかるものばかりだった。
 畔が椿生の方を向くと、彼はゆっくり頷いてくれる。畔は彼の車に乗ったまま根本へテレビ電話をかけると、ワンコールで繋がった。

 『よかった!hotoRi、あなたどこにいるの?!』

 画面には安堵の表情の根本や他のスタッフが写っている。どうやら車に乗っているようだ。畔はすぐに手話をしながら、頭を下げた。
 とても心配させてしまったのだ。椿生と偶然会った事で浮かれすぎていたのを反省した。

 『ごめんなさい……今自宅に帰ってきたところで』
 『自宅って、じゃあ報道陣に囲まれたんじゃ……!』
 『いえ、車で隠れて戻ってきたので大丈夫です。根本さん、あの報道の人たちは何で………』
 『車って、あなた誰といるの?』
 『私の恋人です』

 根本の鋭い質問に、畔は迷いもせずにそう堂々と答えた。
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