極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
叶汰の言葉に、畔は体を小さく震えさせた。何か彼に言い返さなければ。そう思っているのに、手が動かなくなった。
彼はいつからそんな風に思っていたのだろうか。いや、ずっとそう思っていたのだろう。自分と話す時はいつもイライラしていたのだから。
話す方が早いと、面倒だと思っていたのだろう。
『噂の種でもあるそいつと一緒にいればまた噂が大きくなる。…俺のところへ行くぞ』
そう言って、叶汰は畔の方へ近づき腕を掴もうとした。
叶汰の言うことはいつも正しい。彼は厳しいが、自分の事を心配してくれている故だとわかっている。
けれど、椿生の事を悪く言って欲しくはなかったのだ。畔はそれを伝えるために、その手を避けようとした。
が、それより先に畔の腕は掴まれ、何故か後ろにひかれていた。
畔の腕をつかんだのは、叶汰ではなく椿生だった。
畔は驚いて、後ろを振り向いたが彼とは視線が合わない。椿生はまっすぐに前を見据え、叶汰の方を向いていたからだ。
「………何のつもりだよ」
「俺の行動が彼女に迷惑をかけたのは謝る。けど、君が畔ちゃんを連れていってしまうのは恋人としては見逃せない」
背が高い椿生の背中を畔はただ見つめる。
2人は手話を使わずに話始めてしまった。
畔は彼が何を言ったかはわからなかった。けれど、叶汰に何かを言って自分を守ってくれているとはわかる。
畔はハラハラしながらそのやり取りを見つめたが、叶汰の顔は一層厳しくなるばかりだった。