極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
『忘れたなかったんです。どんな音でも残しておこうって思ったんです』
『…音を残す』
『正確ではない。……私が感じたままの音。鳥のさえずりや、サイレンの音やパソコンのキーボードを叩く音。……そんな些細な音を残してあるんです』
『すこのノートは音の記憶なんだ』
『大切なものです』
迷ったときはこのノートを見れば少し心が優しくなった。聞こえたときは耳障りだった音も、今となっては幸せな音の洪水なのだ。
音が溢れる世界はどんなに幸せだったのか。
『…………畔ちゃんがどんな音の名前をつけてくれるのか楽しみにしてるよ』
普通ならば、悲しそうな、申し訳なさそうな顔をするだろう。
それなのに、彼はとても楽しそうに笑ってくれるのだ。彼が畔の耳の事を受け入れ、その上で畔の気持ちをわかってくれているのだと感じられるのだ。
畔は彼に負けないぐらいの笑みを浮かべて大きく頷いた。