極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
椿生がピアノを弾いていた時の雰囲気、楽譜をみた時の感動を畔は今でも覚えていた。
新曲の事を考えると、その曲が頭の中に流れてしまう。それぐらい、畔は気に入っていた。
本当に大好きな曲になっている事を畔は彼に伝えたかった。
『無茶な事を言っているのはわかっています。でも、大好きになってしまったんです。あの曲に歌詞を歌声を、のせたいのです』
『畔ちゃん…』
『もちろん、提供していただくのですからお金は支払います。社長もマネージャーもそれは了解しています。私は必ず素敵な曲が出来て、みんなに納得されると確信していますっ!』
畔が手話で熱弁した後、彼の瞳をジッと見つめる。驚きと困惑した表情の後、椿生は目を細めて微笑んだ。
『そんなに気に入ってくれたなんて、俺は嬉しいよ』
『じゃあ…!』
『昔作ったものだから訂正したい部分とかあるけど…畔ちゃんが望むのならば、あの曲を提供するよ。その方があの曲も喜ぶだろうし』
『ありがとうございます!絶対にいい曲にしますっ!』
畔は、深く頭を下げるが椿生は畔の肩をポンポンッと撫で「そこまでかしこまらないで。お願いって聞いたから、もう帰りたいとか言われるんじゃないかと思ったよ」と、椿生は苦笑いをした。
『これから、2人でいい曲作りをしようね。まぁ、俺は役に立つかわからないけど』
『そんなことないです!よろしくお願いします』
畔が椿生に手を差し出す。
すると、その手を見て、少し驚きながらも彼は大きな手で畔の手をとってくれた。
繋いでくれた手から彼の温かさが伝わってくる。
畔は、その繋がれた手を見つめながら、あの曲がどんなものになるのか、今から楽しみで仕方がなかった。